2015/07/26

小さな美術館、市民が支え。室蘭市

【6-1】(室蘭民報社、文と写真・野崎己代治)引用編集

 年間を通し、様々な企画展が組まれている室蘭市民美術館

 地域を支える鉄鋼業の低迷が響き、北海道室蘭市は、人口が10万人を割り最盛期の半分になった。
ただ、厳しい状況にも、文化の灯をともそうと試みは続く。
開館5年目に入った「室蘭市民美術館」=小原章嗣(おばら・しょうじ)館長(76)=も、その一つ。市民と行政が力を合わせた運営は軌道に乗り始めた。

 市内に美術館を求める動きは、札幌市に1977年開館した道立近代美術館に刺激され、一時広がった。
しかし、具体化には至らないまま、長い"冬眠期"が続いた。

 しかし、88年に「室蘭市港の文学館」が市民の協力もあってオープン。
美術館もつくろうと準備を重ね、2000年に「室蘭に美術館をつくる市民の会」が結成。
会員は最初の2年間で千人超に膨らみ、08年10月、待望の拠点が誕生した。

 ユニークなのは、室蘭市が市民のボランティア組織「室蘭市民美術館をささえる会」=丸山貴陸(まるやま・よしみち)会長(75)=と、パートナーとして協定を結んで進める取り組みだ。
美術館は市文化センター内に設け、維持・管理を市が担当。
ささえる会は、会費や寄付、バザーの収益などを基に、展覧会の企画や運営にあたる。

 所蔵品は、地元ゆかりの画家を中心に約470点。
展示室は常設と企画展の構成だ。
小原館長と丸山会長は「作品は全国に知られた芸術家から、地元画家、小・中・高校・大学生と幅広い。
絵画だけでなく、写真や陶芸、書など多彩。規模は小さいが、温かみのある、まさに市民共有の財産」と、口をそろえる。

 「市立」ではなく「市民」と名付けたことに、関係者の自負がにじむ。入場は無料にし、門も大きく開いている。

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