2015/07/15

山里にバンド旋風  スタジオつくり支援。四万十市

【12-2】(高知新聞社、文と写真・楠瀬慶太)引用編集
野外ステージで演奏する子どもたちのバンド。2013年

 四万十川が流れ、野鳥がさえずる山々にギターやドラムの音が響く。
聞こえてくるのは休校中の小学校校舎から。
児童や中高生の音楽バンドがアニメソングやJポップの演奏に熱中する。

 高知県四万十市(しまんとし)の西土佐地域。
人口3千人の山里がバンドブームに沸いている。
社会人も含め15組が地元で年間20回のライブを開き、住民と共に音楽を楽しんでいる。

 「地域のみんなが支えてくれる」。
昨年、バンドに入った中学1年の岡村香乃楓(おかむら・このか)さん(12)がドラムで軽快にリズムを取る。

 同地域は終戦直後から楽団が結成されるなど芸能が盛ん。
そんな土地柄がバンド活動にも受け継がれた。
後輩の楽器指導やライブをサポートするのも森林組合職員の川上之也(かわかみ・ゆきや)さん(49)ら40~50代のボランティア。
1980年代に青年団バンドで活躍したメンバーだ。

 「山間部でも若者が音楽でキラキラ輝ける環境を提供したい」。
川上さんらが10年前、行政の許可を受け、個人の機材を旧校舎などに持ち込み、作り始めた音楽スタジオは今では6カ所。
高校生らを応援してきた。

 
 小中学生にまで広がったのは4年前、少女バンドが主人公の人気アニメがきっかけ。
児童生徒のバンド5組が次々結成され、ライブには家族や地域の住民も駆け付ける。
 「元気をもらえて地域が盛り上がる。
自分の若い時を思い出す」。
20代のころ音楽団員だった地元の田辺元美(たなべ・もとみ)さん(65)は目を細める。
お年寄りも子どもたちに拍手を送って盛り上がる。
 山あいの野外ステージ。"森のライブ"が始まった。音楽が人と地域をつなげていく。


*活動は伝統から。第2次大戦後から音楽活動が盛んだった西土佐地域。若者を見守る住民の目は温かい。楽器や音楽のジャンルは変わっても、互いに支え合い、地域を元気づけたいという思いは変わらない。バンドブームは、地域の伝統の中から生まれた。

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