2015/09/06

巨大な機関庫、観光の目玉に。大分県・玖珠町(くすまち)

【2-3】(大分合同新聞社、文と写真・伊藤友仁)引用編集
 新たな観光資源として期待がかかる「豊後森機関庫」。手前右が転車台。2012

 頂上が平らなテーブルマウンテンに囲まれた大分県中西部の玖珠町(くすまち)。
特急「ゆふいんの森号」が停車するJR久大線豊後森駅のそばに、巨大な扇形の建造物「豊後森(ぶんごもり)機関庫」がある。

 1934年に完成。
鉄筋コンクリート造りで、面積は1726平方メートル。
最盛期の40年代後半には職員250人が働いていたが、70年に同線の蒸気機関車(SL)が廃止となり、役目を終えた。

 コンクリートは朽ち、割れたままの窓ガラス、さびた転車台―。
時代に取り残された「廃虚」に光が当たったのは2012年4月。
国の文化審議会が国登録有形文化財に登録するように答申した。

 決め手は町挙げての保存運動だった。
2001年、地元有志らが「地域経済を支えたシンボルを後世に残したい」と、保存委員会=河野博文(かわの・ひろふみ)会長(60)=を設立。
建物の保存には億単位の資金が必要なため、補助金を受けられる登録文化財を目指し署名運動を展開、約2万3千人分を集めた。

 機運の高まりを受け、町は06年にJR九州から跡地を購入。
昨年、約2850万円を投じて機関庫の屋根の防水工事を実施した。

 河野会長は「ここからが本当のスタート。
機関車の保存展示施設としてよみがえった京都市の梅小路(うめこうじ)蒸気機関車庫のように、多くの人が訪れる場所になってほしい」と期待を寄せる。

 町は機関庫などをアピールしながら隣接する九重町や由布市湯布院町を訪れる観光客を取り込もうと、商工観光振興課を新設した。
朝倉浩平(あさくら・こうへい)玖珠町長(65)は「観光資源として大きな可能性を秘めている。
保存や活用法について町民と議論を重ねたい」と意気込む。
廃虚だった建造物が観光産業で苦戦する町の救世主となるか―。
注目を集める取り組みが動きだそうとしている。


*
 機関庫は太平洋戦争時に米軍の機銃掃射を受け、壁に弾痕が残る戦争遺産でもある。
近隣には有名観光地があり、客を呼ぶ魅力をいかにつくり出すかが課題。
映画「僕達急行 A列車で行こう」にも登場、注目度は高まっている。

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