2010/05/31

「旭川観光は川越に学べ」『北海道経済』、旭川メモ。2008年7月号

「旭川観光のパワーアップは小江戸・川越に学べ」
『北海道経済』2008年7月号 


ラーメン村の木村政博社長と


旭川観光のパワーアップは小江戸・川越に学べ

「観光スポットは点から線へ」
「歴史教育観光ルートの作成を」

武蔵観研 会長(元・川越奥武蔵観光情報学研究会主査) 桑原政則

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人口34万人、
商工業都市で中核市、
耕地面積上位の農業都市などなど
旭川市と共通点の多い埼玉県川越市。


しかし観光地としてのパワーには大きな差がある。
旭川観光に足りないものはなにか。

『第五回観光情報学会 全国大会in 旭川』出席の後、
旭川を代表する観光スポット・
あさひかわラーメン村に
足を運んだ武蔵観研(川越奥武蔵観光情報学研究会主査)の
桑原政則さんに、
㈱あさひかわラーメン村の木村政博社長が聞いた。
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常に、飽きさせない仕掛けを



木村 
 旭川市の大雪クリスタルホールで昨日まで行われていた
『観光情報学会全国大会』
(2008年5月28日と29日の2日間開催)では
川越の観光の取り組みなどを紹介されたそうですね、
ご苦労様でした。

桑原 
 はい、私は「埼玉県ときがわ町観光の可能性」をテーマ
とするブースを開きプレゼンをしました。

また一緒に来た仲間が
「川越ブランド骨酒パック」
「持続可能な観光」
「川越市のホテルの観光戦略」と銘打って
それぞれのブースで川越と観光に関して
アピールしました。

木村 
 旭川は初めてですか? 
どういうイメージを持っていましたか。

桑原 
 北海道の中央に位置し、西は日本海、北のオホーツク、
南の太平洋で揚がる魚が集積し、
「おいしい魚が食べられるところ、陸の港」と
聞いてきました。
 2日間、いろいろいただきましたが、
シャケやカニに、
舌鼓をうちました。本当においしかったですね。

木村 
 川越市について勉強不足で申し訳ありませんが、
埼玉県の主要都市で観光地として有名といった知識しか
持ち合わせていないのですが、
どのようなまちなのですか。

桑原 
 川越は食べ物ではイモ、イモ料理が有名です。

 「栗よりうまい十三里」という言葉があります。
これは 「栗=九里」 と、「より=四里」を足して十三里、
江戸から十三里離れた川越のイモを称えたものです。

また、魚は今ひとつなんですが、
そのために逆に工夫してウナギがとてもおいしい。
ウナギ料理で知られています。

 人口は34万人です。

江戸時代には新河岸(しんがし)川の舟運で
江戸と深く結ばれ城下町として栄え
「小江戸」と
呼ばれました。

 江戸の北の守りとして重視され、
歴代川越藩主は江戸幕府の重鎮が就任しました。

木村 
 人口は旭川とほぼ同じなのですね。
 旭川は旭山動物園が有名になってここ数年、
観光客入り込みが伸びているのですが、
川越はそれ以上、非常に好調だと聞きますが、
実際はどうなのですか。

桑原
 20年前の1989年にNHK大河『春日局』が放送され、
観光客が一挙に100万人ほど増えました。
春日局は徳川3代将軍家光の乳母です。
ドラマの舞台となって川越の知名度が
飛躍的にあがりました。

 NHK大河ドラマの舞台となって一挙に観光客が
増えたまちは全国に数多くあります。

しかしその大半は数年後にブームが去っているのが
実情でしょう。
川越の場合はドラマが与えてくれた絶好の
チャンスを見事に生かした
のです。

訪れた観光客を飽きさせない、
何度行っても
新しい見どころがあるようにと、眠っていた観光資源を再生させ、
毎年のように新たなスポットを作り出していきました。
そういった仕掛けが常に必要です。

 今は、鎌倉、日光と並び「関東の観光御三家」に
川越が数えられるようになっています。
今年は600万人を数えると思います。
来春のNHK朝ドラ「つばさ」で再び川越を
中心とする埼玉が舞台となる予定で、
川越市では2010年の
観光入り込み「1000万人」を目指しています。


地元で支持されるのが大事



桑原 
 こちらからも質問があるのですが、ここ、ラーメン村は年間、
何万人の方が利用するのですか。

木村
 前年実績で64万人です。
 1996年8月に「年間30万人」を目標に
開業しました。
旭川ラーメンブームに乗って初年度から目標を超えることが
でき年間50万人の利用がありました。
ここ数年は旭山動物園人気のお陰でさらに利用者は
増加傾向にあります。

桑原
 地元の方の利用と観光客の比率というのは
どうなっていますか。

木村
 最近は動物園入園の前後に訪れる海外観光客も
増えていて、この数字は把握できるのですが、
地元利用者や市外、また道外の方が
どの位かは推量するしかありません。
おおよそですが、地元の人と、外国人観光客を含む
地元以外の比率はフィフティフィフティ
だろうとととらえています。

桑原
 地元に支持されるということは非常に大事ですね。
今後も地元のラーメンファンを大事にしていったら
よいと思いますね。

 3年前におこなった川越市の調査では、川越を訪れる人は
圧倒的に関東エリアの人が多く
86%を占めているとの結果が出ています。
県別では地元埼玉が43%で、
東京の25%、神奈川の8%、千葉6%と続きます。
男性より女性が多く、
総じて近隣の50歳以上の女性に人気があります。

 さきほどここでラーメンをいただきましたが、
非常においしい。
コンパクトに8店がまとまっていて良い施設だと
思いました。
 ただ残念なのは近くにほかの観光施設がなく、
年間60万人以上を集客しながら
「点」で終わっていることですね。

川越は「時の鐘」「喜多院」「蔵造りの町並み」
「菓子屋横丁」など多くの観光スポットが一つの線で
つながっています。


 旭川の観光施設も1つの線でつながると
相乗効果が生まれもっと魅力が増すと思います。
先ほど平和通買物公園を見てきましたが、
日本最初の歩行者天国という格好の
うたい文句があるのに、
ちょっと寂しい感じがしましたね。


 川越駅から北へ延びる商店街は
クレアモールといい
関東でも屈指のにぎわい。
平日でも2万人の買物客でごった返しています


点から線への試みによってショッピングなどももっと賑わいを
取り戻せるのではないかと思いますが。


北鎮(ほくちん)、兵村(へいそん)などをコースでアピール



木村
 川越の観光スポットは線でつながっているということですが、
距離的にはどのくらいなのでしょう。
施設と施設の間のアクセスは徒歩ですか、
バスなどを利用するのですか。

桑原
 2キロほど隔たって次の施設があり、徒歩で回れます。
小江戸めぐり、七福神めぐりなどがありますが、
巡回バスで巡るルートも用意されています。

木村
 観光客1000万人を掲げるなど川越はずいぶん
元気が良いようですが、
それでも課題はあるのでしょうね。

桑原
 川越の観光の顔は、
一番街周辺の「蔵造りの町並み」です。

 観光客はまわりの 時の鐘、菓子屋横丁、喜多院などに
集中します。
しかし外国人観光客は
町の中だけに関心があるのではなく、
たとえば韓国人なら日高市の高麗(こま)神社
台湾人は坂戸市の聖天宮(せいてんきゅう)
訪れたいと思っています。

こうした近隣市町村と連携して観光地域を拡大して
いかなければならないと考えています。


 また、そこの地にゆかりのある人物を知ると、土地への興味も
さらに増します。
太田道灌、春日局、島崎藤村、徳川家光、源義経など
川越にかかわりのある偉人は数多く、
それらの足跡をたどるコースづくりも必要だと思います。

 高齢化の影響で庶民的な芸能が
再認識されつつあります。
川越には「湯遊ランド」という施設があり股旅物や
歌謡ショーが365日催され
大衆演劇ファンをひきつけています。
大衆文化コースというのも考えられますね。

木村
 こちらでも、富良野エリアと連携を図るなど広域的な
取り組みを強化しています。
 あと、確かにゆかりの人物を知る、業績を伝える施設
というのは大事ですね。
有効な観光スポットにもなりますね。
ただ、北海道の場合、歴史が浅く、
その点では川越がうらやましく感じます。

桑原
 こちら(ラーメン村)にうかがう前に、
北鎮(ほくちん)記念館
寄りましたが、資料がとても充実して素晴らしかったです。
旭川兵村(へいそん)記念館もありますよね。

本州に比べて歴史が浅いとはいえ、屯田兵以降、
開拓の歴史、第七師団の果たしてきた役割などを
伝える施設はあるのですから、
そういう施設をもっとアピールする、
いうなれば「歴史教育観光」に力を入れていったら
よいと思いますよ。

 旭山動物園には学生さんがたくさん訪れると聞いています。
それに北鎮記念館や兵村記念館を歴史教育観光として
組み合わせてコースとすればよいのではないでしょうか。


若者、ばか者、よそ者のパワーと知恵



木村
 歴史教育観光ですか。
"資源"は旭川にもあるのですね。
桑原先生らの考え方や活動を参考にしてもっと
旭川も頑張らなければだめですね。
これを機会に旭川と川越の交流も深めていきたいですね。

桑原
 今回、西川将人市長や扇松園の高橋仁美女将とも話す
機会がありまして
2つの市の交流を進めましょうということを話し合いました。

 観光とは「光(よいところ)を観せる」ことです。
光とは住民の笑顔です。沖縄にも川越にもそれがあります。
旭川はどうでしょうか? 
もっともっと、スマイルがあれば、観光客はさらにほほえんでくれると思います。
さらに観光客にはなしかけることも必要です。

 よく「観光は若者、ばか者、よそ者がつくる」といいます。

「若者」は、エネルギーがいつの時代でも大きな推進力です。
「ばか者」は、寝食を忘れものごとに真剣に打ち込みます。
「よそ者」は、地元民の気付かない視点で良さを発見できます。

 お互いに街が元気になるように頑張りましょう。



●桑原政則 くわばらまさのり
 1940年(昭和15年)生まれ。東京外国語大学大学院を経て
京都大学東南アジアセンター派遣留学生として
タイを中心とした東南アジアの研究に従事。チュラロンコン大学客員教授。
現在、東京国際大学人間社会学部教授。武蔵観研会長(元・川越奥武蔵観光情報学研究会主査)。小江戸川越観光親善大使

*一部追加訂正済み。



旭川は3方の海から
日本海・オホーツク海・太平洋の三つの海から、おいしい魚があつまります。

旭川市 
北海道のほぼ中央
大雪山の懐に抱かれた雄大な自然と旭山動物園
札幌市に 次ぐ人口を誇る中核市
旭川動物園と旭川ラーメン

全国一地震発生率が低い


旭川グランドホテルにて
左から:木所勝邦。吉田徹枇。枇杷木賢生。石井昭三。桑原政則 /2008年

木所勝邦「川越市のホテルの観光戦略」
『第五回観光情報学会 全国大会in 旭川』2008年


桑原政則「埼玉県ときがわ町観光の可能性」
『第五回観光情報学会 全国大会in 旭川』2008年