2012/08/28

教育委員会どんな組織?(NK2012/8/27)

【メモ】
・当初は公選制。投票率が低く、反体制派が圧勝。
・名誉職化で形骸化。
・公選制に戻し、根本的議論を。

ニッキィの大疑問教育委員会どんな組織?
首長から独立、「専門家」の弊害も 

 最近、いじめ問題の記事などで教育委員会がよく取り上げられているわね。聞いたことがあるけれど、どんな役割を担っている組織なのでしょう?
画像の拡大
 教育委員会への関心が高まっている。どのような組織で、どんな人々が関わっているのか意外に知られていない。制度の仕組みや課題などについて、磯野和恵さん(42)と長谷川悦子さん(40)が社会部の横山晋一郎編集委員に聞いた。
 そもそも教育委員会の役割を教えてください。
 「教育委員会は都道府県や市区町村に置かれています。文部科学省によれば2011年5月現在で約1800。地域の学校教育や社会教育、文化、スポーツの振興などの事務を担当しています。公立学校や図書館などの設置と廃止、教員の任免、授業で使う教科書や教材の選択、学校給食、文化財の保護など幅広い権限を持っています」
 どのような組織で運営されているのですか。
 「教育委員会という場合、地域の教育政策を決める教育委員の会議を指す場合と、教育行政を担う教育委員会事務局を指す場合があります。教育委員は原則5人ですが、規模によって6人以上、あるいは3、4人の自治体もあります。委員は知事や市長など自治体の首長が任命し、議会が承認します。任期は4年で、必ず保護者を加えなければなりません。委員の中から、議長役の委員長と事務局を統括する教育長を選びます」
 「教育委員会は、月に1~2回の定例会のほかに、臨時会や非公式の協議会を開くことがあります。教育長以外は非常勤なので、実際は事務局を統括し地域の教育行政の方針を決め執行する教育長が最も権限があります。文科省によると、都道府県の教育長は行政出身が約6割、市区町村は教員OBが約7割を占め、ある意味ではプロが委員会を仕切っています」
 教育委員会が設置された経緯を教えてください。
 「1948年、戦後に日本の民主化を推し進めたGHQ(連合国軍総司令部)の教育制度改革の一環として、教育行政の地方分権や自主性の確保などを目的に設置されました。当初は委員は公選制で首長からの独立性が極めて高い組織でしたが、首長のライバルが教育委員に立候補して激しく対立するなどの問題も出てきたため、公選制は廃止され、その後の法改正を経て現行の制度になりました」
 現制度にはどのような課題があるのですか。
 「首長から独立した組織であるため、教育行政に対する首長の過剰介入を防ぐ長所はありますが、首長と教育委員会の考え方が対立する場合もあります。例えば数年前には、全国学力テストの実施の是非や結果の公表方法を巡って、首長と教育委員会が対立した自治体が相次ぎました。建設的な論争は大歓迎ですが、『自分たちは教育のプロだ。首長ら素人に何がわかるのか』という発想が見え隠れすることもあるようです」
 「教育委員や教育長、教育委員会の事務局職員は教育関係者が就く場合も多く、仲間意識の強い内向きの組織になりがちです。本来の趣旨は、地域住民や幅広い分野から委員を集め、教育行政を活性化させることでした。ところが、必ずしも教育に詳しいわけではなく、しかも委員職自体が名誉職化したことや、月に1~2回しか会議が開かれない現状に対して形骸化だと批判する声は絶えません」
 今後、どのような改革が重要でしょうか。
 「『教育委員会は必要なのか、どうあるべきか』という根本的な議論が必要です。相次ぐいじめや子供の自殺に対し、教育に携わる人々や組織が打開策を見いだせていません。それどころか、原因究明が遅れ、誰も責任を取らない体質だと批判されても仕方ありません」
 「都道府県と市区町村の教育委員会の関係も考え直す余地があります。公立の小中学校は市区町村がつくっているのに、そこで働く教員の採用や異動などの人事権は都道府県が握る二重構造になっています。給与の支払いも都道府県です。財務体質の問題もあり、市区町村にすべてを委譲することは現実的ではありませんが、都道府県の影響力が強すぎます。ここ数年の政治の混迷も、改革を遅らせている要因のひとつだと思います」
■今週のニッキィ
磯野 和恵さん 生命保険会社勤務。アーユルベーダなどを生活に取り入れ、体調改善効果を体感。「9月に秩父を訪ね、自然とのふれ合いや札所巡りを楽しみたいです」。
長谷川 悦子さん メーカー勤務。早朝、笑いを取り入れたヨガ教室を定期的に開いている。ストレス社会を生き抜く上で「笑いは心と体をコントールする優れた健康法です」。
 ■ニッキィとは 最近日経を読み始めた女性の愛称です。日本経済新聞社は毎週、経済通、世の中通を目指す読者を本社に招いています。詳しくはhttp://www.nikkei4946.com/nikkey/をご覧ください。
関連キーワード
教育委員会、スポーツ、日本経済新聞社