2017/11/14

秩父を大観光地に。めざすは、東武の日光、小田急の箱根、西武の秩父に

廃線騒動から4年 西武秩父線の今  
2017/11/14  nk  を抜粋編集

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めざすは、東武の日光、小田急の箱、西武の秩父に
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 西武ホールディングス(HD)のかつての大株主、米投資ファンドのサーベラス・グループが今夏、西武HDの全株式を売却した。両者は4年前、経営方針を巡って対立。サーベラスが西武秩父線などを不採算路線とし、廃線を要求した。鉄道の存続を求める地元の反対機運もあり、西武HDと傘下の西武鉄道は秩父地域を一大観光地にしようと誘客策を次々に打ち出した。「災い転じて福となす」(上田清司・埼玉県知事)といった具合に、地域経済を活性化しつつある。

 複合温浴施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」の開業もにぎわい創出につながっている(埼玉県秩父市)

 関東の大手私鉄では東武鉄道が日光、小田急電鉄が箱根といった観光名所を持つ。西武鉄道は秩父地域をこれらに匹敵する観光地にするため、2013年からテレビCMで初めてPRするなど誘客強化に乗り出した。そんな時に廃線騒動が起きた。

 これを機に、地域住民らが結束。沿線の自治体や経済団体は「地域の足」の存続を求め、署名活動や鉄道の利用促進運動を展開した。その後も西武鉄道は秩父地域が舞台のアニメを活用したキャンペーンや「ちちぶ映画祭」の開催、地元住民が冬に作る氷柱を鑑賞するための徐行運転などを行ってきた。16年に導入した関東私鉄初の観光列車「西武 旅するレストラン 52席の至福」では地域食材を活用するほか、特産品を手土産として提供している。

 一連の誘客策が奏功し、秩父線の秩父地域の乗降客数は増加傾向。複合温浴施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」(埼玉県秩父市)が17年春に開業した効果もあり、17年度も前年を上回るペースだ。16年の秩父地域1市4町の駅や観光施設などを訪れた観光客は約960万人に上り、5年間で約150万人増えた。

 ただ、秩父地域では人口減が進んでおり、観光客の滞在時間や消費額をいかに増やすかが一層の地域経済活性化の鍵になる。駅から広範囲に点在する観光地に足を運んでもらうには、2次交通の充実も不可欠だ。

 1市4町でつくる秩父地域おもてなし観光公社は広域レンタサイクルに加え、17年度から定額で観光地を巡れるタクシーサービスを始めた。地元産品のブランド化や販路開拓の支援にも乗り出した。秩父地域を一大観光地に育成するには鉄道による誘客だけでなく、地元自治体や事業者の息の長い連携が欠かせない。

 ▼西武秩父線の廃線騒動 西武HDの再上場を巡って対立したサーベラスが2013年に西武HDに対してTOB(株式公開買い付け)を実施。サーベラスが西武秩父線や多摩川線、国分寺線などの廃線を要求したのを受け、沿線自治体が署名活動などで存続を求めた。

(さいたま支局 藤田このり)

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